合同会社の設立時は、代表社員が交代・変更となるイメージはなかなか持てないかもしれませんが、時間の経過とともに組織体制の変更が必要な場面が出てきます。ですが、登記変更の機会が少ない合同会社では、何から手をつけて良いか分からないかもしれません。本記事では、合同会社の「代表社員」が交代する際に必要となる社内での手続や登記申請の方法について、主に自分で申請できないか検討している方向けに解説します。合同会社の代表社員変更(交代)に必要な手続合同会社の代表社員の変更は、以下の各手続が必要になります。自社がどのパターンに当てはまるか確認しながら必要な書類を用意しましょう。①定款の確認まずは自社の定款で「代表社員」に関する規定を確認します。これによりこの後に必要な手続が決まります。主に以下のパターンがあります。パターンA:社員の互選で定める業務執行社員の中から代表社員を選出するケースパターンB:定款で特定の氏名を指定している定款に代表社員の氏名が直接記載されているケース。パターンC:特に定めがないこの場合、原則として業務執行社員が各自合同会社を代表します。②社内での決議上述したパターンおよび定款の定めに従って、新しい代表社員を決定するための手続を行います。新代表社員の選任上記パターンAの場合、業務執行社員(会社の業務を行う権限を持つ社員)の過半数の一致など、定款で定めた方法で新代表社員を選びます。この決定を証明する議事録に当たる「業務執行社員の互選書」などの書類を作成します。定款の変更パターンBのように定款で代表社員の氏名を直接指定している場合は、代表社員の交代に伴い定款の変更が必要になります。定款変更は原則として総社員の同意が必要で、「定款の変更に係る総社員の同意書」などの書類を作成します。③新代表社員の就任承諾上記パターンAの場合、選ばれた新しい代表社員から、「代表社員に就任することを承諾します」という意思表示を書面(就任承諾書)で得ます。④登記申請の準備上述の手続が完了したら、その変更内容を公に示すための変更登記の登記申請書、互選書、就任承諾書や同意書などの必要書類を準備し、法務局に申請します。この登記は、変更があった日から2週間以内に行う必要があります。合同会社の代表社員変更の登記申請について社内での決議の後は、法務局へ変更登記を申請することで登記簿に変更内容が反映されます。登記申請にかかる費用(登録免許税)法人の変更登記では、登録免許税という税金がかかります。金額は登記する内容によって異なりますが、代表社員の変更では1万円 (資本金が1億円以下の場合。資本金が1億円超の場合は3万円。)となります。なお、弁護士や司法書士などの専門家に申請代行を依頼する場合はその報酬も必要です。登記申請書への記載内容登記申請書には、以下の内容を記載します。会社法人等番号:会社の識別番号商号本店(会社の本店所在地の住所)登記の事由(「代表社員の変更」などと記載します。)登記すべき事項(新しい代表社員の氏名と住所と原因年月日などを記載します。)登録免許税額(1万円) ※資本金が1億円以下の場合添付書類(後述する必要書類のリストを記載します。)申請日、申請人の氏名・住所、連絡先電話番号登記申請書の必要書類登記申請書と合わせて以下の書類を法務局に提出します。前任の代表社員の状況、定款の定めやパターンなどによって必要書類は異なりますので、自社の状況に合わせて準備してください。変更登記申請書旧代表社員の辞任や定款変更に係る総社員の同意書(定款で直接定める場合)業務執行社員の互選書(社員の互選により定める場合)就任承諾書(社員の互選により定める場合)旧代表社員の辞任届(社員の互選により定める場合)印鑑届書(代表社員の交代に伴い、法務局に登録する会社の代表印(実印)を変更する場合に必要です。新しい代表社員の個人の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内)も提出します。)定款(社員の互選により定める場合)委任状(弁護士や司法書士に申請を依頼する場合。自分で申請するなら不要。)なお、法務局のWebサイトでは、合同会社の業務執行社員の退社および加入についての登記申請書や必要書類の書式(ひな形)がダウンロードできます。代表社員の交代にそのままは使えませんが、総社員の同意書など一部の書類については参考になるでしょう。参考リンク:合同会社変更登記申請書(業務執行社員の退社及び加入)不安な場合は専門家に相談するのも有効代表社員の変更手続きは、本記事で紹介した書類を参考にすることで、自分で行うことも十分に可能です。しかし、日々の業務が忙しく、書類の作成内容や手続きを調べる時間がない定款の規定が複雑で、自社がどのパターンに当てはまるか分からない登記以外にも、役員退職金の支払いや社会保険の手続きなど、付随する疑問があるといった場合には、弁護士や司法書士など法律の専門家に相談することも有効な選択肢です。登記申請の代行はもちろんのこと、定款の確認から必要書類の作成、関連する法務上のアドバイスまでサポートが可能です。その分、費用はかかりますが、それ以上に時間的・精神的な負担を軽減することができます。