会社の管理部門などにおいて、取締役の選任にあたって取締役の就任承諾書の用意が必要になることがあります。しかし、就任承諾書といわれてもどのような書面なのかどういう内容を記載すれば良いのか分らないという方も少なくないでしょう。本記事では取締役の就任承諾書のひな形(テンプレート)や記載事項について解説します。GVA 法人登記のクーポン付メルマガを購読登記申請のタイミングは忘れた頃にやってくるものです。GVA 法人登記のメルマガでは、毎号割引クーポンを配布しております。登録フォームからぜひご購読ください。取締役の就任承諾書とは?そもそも取締役の就任承諾書とはどのような書面でしょうか。ここでは取締役の就任承諾書について解説します。取締役(役員)が就任を承諾したことを意思表示する書面取締役の就任承諾書とは、取締役として選任された人が就任を承諾したことを意思表示する書面のことをいいます。なぜこのような書面が必要かというと、取締役や監査役などの役員は、会社と委任関係に立ち、株主総会で選任されただけでは、委任関係は成立しないため、株主総会で選任された人が就任を承諾する証として就任承諾書を提出するのです。というのも、委任契約も契約一般の民法上の原則に従い、申し込みの意思表示とそれに対する承諾によって契約が成立するため、選任されたら自動的に役員になるわけでないため、就任の効力発生の証明として必要となるのがこの就任承諾書です。なお、この就任承諾書は役員であれば取締役だけでなく監査役や社外取締役などでも同様に必要となります。この就任承諾書は株主総会で選任を決議した後に必要となります。本記事では、会社設立後に役員が新たに就任するケースを対象に解説します。そのため、会社設立時の役員は対象外となる点にご注意ください。なお、就任承諾書は、取締役の新任の場合だけでなく、重任の場合でも必要となりますが、株主総会や取締役会に出席し、席上で就任承諾した旨を議事録に記載している場合は、就任承諾書は省略可能です。代表取締役の就任の場合取締役会設置会社の場合、代表取締役の選定は取締役会決議によってなされます。これに対して取締役会非設置会社の場合には代表取締役の選定は取締役の互選によるほか、定款で定める場合や株主総会決議で定める場合があります。株主総会決議や定款で代表取締役を決めた場合には取締役の地位と代表取締役の地位は一体のものとなるため、取締役の就任承諾書のみが必要となり、代表取締役としての就任承諾書は不要となります。これに対して、取締役会決議で代表取締役を選定する場合や定款の定めによる取締役の互選による選定の場合は、取締役としての就任承諾書とは別に代表取締役としての就任承諾書も必要になるため注意が必要です。登記申請時の添付書類として必要になる取締役が新任・重任された場合には登記申請が必要となりますが、この就任承諾書は辞任時の辞任届などと同じように、登記申請時の添付書類として必要になるため、必要な記載項目に不備がないように用意することが重要となります。なお、記載項目については後述いたします。就任承諾書の作成方法・ひな形(テンプレート)では、就任承諾書はどのように作成すれば良いのでしょうか。ここでは就任承諾書の作成方法やひな形について解説します。就任承諾書に記載すべき項目就任承諾書の書式については厳密なルールや決まった書式というものはありませんが項目として、①就任を承諾するの旨の文章②日付③役員の種類④役員の住所⑤氏名⑥会社名⑦役員の押印、が必要になります。以下ではそれぞれの項目について解説します。就任を承諾する旨の文章承諾の文章は特に文章の決まりはありませんが、選任されたことと選任という委任契約の申込みに対し、それを承諾する旨の意思表示が明確になるように「私は◯年◯月◯日開催の株主総会にて貴社の取締役に選任されましたので、その就任を承諾いたします。」などの形式で記載するようにしましょう。日付日付は「取締役に選任された日」を記載することになります。前述の通り株主総会の開催された日を記載することになるでしょう。役員の種類選任された役員の種類を記載します。役員には取締役、監査役、会計参与がありますが、どの役職に選任されたのか明確に記載しましょう。役員の住所選任された役員の住所を印鑑証明書に記載の通りに記載しましょう。日常的に使用している省略された住所や運転免許証などに記載されている簡易な住所を記載しないように注意しましょう。特に番地や号は簡易的に「1-1-2」などとしている例が多いですが印鑑証明書上、「1丁目1番地2号」と記載がある場合には印鑑証明書に合わせた正しい記載をする必要があります。氏名氏名についても住所と同様に印鑑証明書に記載された正しい表記での氏名を記載する必要があります。会社名会社名を正しく記載します。基本的には定款に記載された商号通りに記載することになるでしょう。(株)や(有)といった省略された会社名を記載しないように注意しましょう。役員の押印就任承諾書へは実印を押しておけば安心ですが、実印が不要なケースもあります。取締役会設置会社の場合には取締役の就任承諾書へは実印の押印は不要です。そのため、印鑑証明書の提出も必要ありません。代わりに本人確認書類(住民票)の添付が必要となる点は注意しましょう。これに対して、取締役会非設置会社の場合には取締役の実印の押印が必要となるため印鑑証明書の提出も必要となります。なお、重任の場合は取締役会設置の有無にかかわらず認印でも認められるため、印鑑証明書の提出は不要となります。代表取締役の選定では印鑑が異なる取締役会非設置会社で、定款の定めにより取締役の互選で新たに代表取締役が就任するケースや重任の場合は実印の押印は必要なく認印での押印が可能です。ただし、取締役に新たに就任する就任承諾書と兼ねる場合には、上述のとおり実印の押印が必要とな点にご注意ください。これに対して取締役会設置会社で新規に代表取締役に就任する場合は実印および印鑑証明書の添付が必要となります。このように会社の機関設計や重任であるかどうかなどによって実印の押印が必要となるかが異なることがあります。標準的な就任承諾書のテンプレート(ひな形)就任承諾書には前述の通り決まった書式はありませんが、標準的な就任承諾書のテンプレートが法務局のHP内にある役員変更の書式内に含まれています。そのため、特に書式にこだわりがないのであれば上記のリンク先にある就任承諾書を参考に作成するのが良いでしょう。参考リンク:株式会社役員変更登記申請書(辞任等により新たな役員(取締役)が就任した場合)就任承諾書の注意点・不要なケース就任承諾書を作成する上でどのような点に注意すべきか、またそもそも就任承諾書が不要となるケースについてここでは解説します。複数名の取締役の場合は1名ごとに承諾書が必要複数名の取締役を選任した場合には1名ごとに就任承諾書が必要となります。特に取締役会非設置会社の場合で新任取締役として選任された場合には、実印(市町村に登録した印鑑)を押印し、印鑑証明書を添付する必要がそれぞれあるので注意しましょう。承諾書内の記載項目は正確に記載する就任承諾書内の記載項目は正確に記載しましょう。特に住所や氏名は印鑑証明内に記載の正確な記載に合わせるようにしましょう。また、会社名は(株)など略さないように、定款に記載された正式な会社名を正しく記載しましょう。押印については、取締役へ就任する場合か代表取締役へ就任する場合か、新任か重任か、取締役会設置状況等によって異なります。自社の状況に照らして正しい印鑑を押印し、実印の押印をしたときは印鑑証明書を添付するのを忘れないようにしましょう。就任承諾書が不要な(省略できる)ケース就任承諾書は常に必要となるわけではありません。株主総会に選任された役員が出席し、議事録に、株主総会決議の席上で就任を承諾した旨の記載がある場合で議事録内に選任する役員の住所が記載されている場合には役員の就任承諾書は必要ありません。この場合には、登記申請書に「就任承諾書は、株主総会議事録の記載を援用する。」と記載する方法で申請を行う事になります。就任承諾書は正しく記載・押印して確実に登記手続きしましょう役員の就任承諾書は特に定まった書式は無いものの、記載すべき項目が記載されていないと登記手続きにおいて用いることができず、選任された役員を登記できないといった自体にもなりかねません。本記事及び法務局の書式などを参考にし確実に登記手続きを行なうようにしましょう。手続きが複雑な場合や相談が必要な場合は、弁護士や司法書士など法律の専門家のアドバイスを受けることも有効な方法です。