会社の役員に変更があった場合や役員が再任された場合、法務局への登記申請が必要です。しかし、申請書などの必要書類の準備や登録免許税の納付など、どこから手を付ければ良いのか迷うこともあるでしょう。本記事では、役員重任登記の手続の流れ、必要書類や登録免許税などの費用について、申請手続をわかりやすく解説します。GVA 法人登記のクーポン付メルマガを購読登記申請のタイミングは忘れた頃にやってくるものです。GVA 法人登記のメルマガでは、毎号割引クーポンを配布しております。登録フォームからぜひご購読ください。役員重任の登記とは?役員重任の登記は、取締役や監査役が任期満了後、再度就任する際に法務局で申請が必要となる手続です。ここでは、役員重任の具体的事例、必要書類や手続について詳しく解説します。役員重任とは?役員の重任とは、株式会社において、任期満了となる取締役や監査役などが退任と同時に時間的間隔を置かずに就任した場合を指します。この際、法務局での登記申請が必要です。株式会社における「役員」とは取締役(代表取締役を含む)、会計参与および監査役を指し、これに執行役および会計監査人を加えたものを「役員等」と総称します。役員及び会計監査人は氏名(法人の場合は名称)が登記事項となっており、重任を含め変更があった場合には登記が必要となります。役員の任期は、会社法や定款により定められますが、以下のとおりとなっています。取締役・会計参与の任期:原則2年(監査等委員会設置会社における監査等委員でない取締役および指名委員会等設置会社における取締役の場合は1年)非公開会社では、定款により10年まで伸長可能なほか、定款または株主総会の決議により任期を短縮することも認められています。監査役の任期:原則4年非公開会社では、定款により10年まで伸長可能です。任期満了前に退任した監査役の補欠として選任された場合、その監査役の任期は、定款により前任者の任期満了時まで短縮することができます。ただし、それ以外の理由で任期を短縮することは認められません。任期満了となる役員がいる場合、後任の役員を選任する必要がありますが、同じ人を再任することも可能です。任期満了後に、時間的間隔を置かずして同じ職に再任することを重任といいます。ただし、同じ人が退任後、期間を空けて再び同じ職に就任する場合は、重任には該当しません。役員の退任事由は、任期満了、辞任、解任、死亡や資格喪失などがあります。これらの事由に応じて必要な手続や登記の必要書類が異なるため、事由に応じて検討する必要があります。役員が重任したら登記申請が必要役員が重任する場合、登記簿に氏名や役職がすでに記録されているため、登記が不要だと誤解する方や、手続の重要性を軽視して申請しない方もいるかもしれません。しかし、役員が重任した場合は2週間以内に法務局で登記を申請することが必要で、これを怠ると、登記懈怠による過料を科せられたり、将来の上場準備や増資などのデューデリジェンス時に支障をきたしたり、休眠会社とみなされて「みなし解散」の登記がされてしまうリスクがあります。そのため、必要な手続を速やかに行うことが重要です。役員重任登記を自分で申請することは可能役員重任登記は、弁護士や司法書士など法律の専門家に依頼する方法と、自分で申請する方法の2つがあります。専門家に依頼すれば、調査や書類作成の手間を省くことができますが、その分、報酬が発生します。一方、自分で申請する場合は手間や時間がかかるものの、費用を抑えることが可能です。特に中小企業やスタートアップの場合、取締役や監査役の変更といった一般的な役員変更であれば、書類作成は比較的容易です。中でも役員構成に変更がない重任登記では、法務局が提供するひな形を活用すれば、大きな負担なく必要書類を準備できます。本記事では、株式会社の役員重任登記に焦点を当て、登記申請の流れや必要書類・費用について詳しく説明します。役員重任の登記申請の流れ役員重任登記の手続は、主に次の2つのステップで構成されます。株主総会(または取締役会)での重任決議法務局への役員重任登記の申請①株主総会での役員重任の決議取締役の任期は、原則として選任後2年(監査役の場合は4年)以内に終了する事業年度にかかる定時株主総会の終結をもって満了となります。そのため、当該株主総会において、取締役や監査役の重任決議が必要です。取締役、監査役及び会計参与の選任は株主総会の普通決議によります。普通決議の成立要件は、議決権を行使できる株主の議決権総数の過半数が出席し、その出席株主の議決権の過半数の賛成を得ることです。定款で要件を変更することは可能ですが、以下の制限があります:定足数を議決権行使可能株主の1/3未満にすることはできない。決議要件を出席株主の半数未満にすることもできない。株主総会の招集に関する決定は、取締役会設置会社では取締役会の決議事項となるため、株主総会の招集にあたっては前提として取締役会決議も必要となります(その他の会社においては取締役の決定によります)。さらに、株主総会決議が成立した後は、株主総会議事録を作成する必要があります。監査役の選任議案を株主総会に提出するにあたっては、事前に監査役の同意を得る必要がある点にも注意が必要です。取締役会設置会社において、任期満了となる取締役の中に代表権を有する取締役が含まれる場合、定時株主総会後に取締役会を開催し、代表取締役の重任決議も行う必要があります。取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数の賛成により成立します。なお、定款によって定足数や決議要件を引き上げることは可能ですが、緩和することはできません。なお、取締役会の決議について、利害関係を有する取締役は決議に参加できないとされていますが、代表取締役の選任決議では、候補者本人は利害関係人に該当しないため、決議に参加することが可能です。取締役会非設置会社では、原則として各取締役が代表取締役となります。ただし、以下の方法により特定の取締役を代表取締役に選定することが可能です:1)定款で定める方法2)定款の定めに基づく取締役の互選3)株主総会の決議特定の取締役のみを代表取締役とする場合、定款で選定方法を確認し、正確に手続きを進めることが重要です。②登記申請書類を作成して法務局に提出する株主総会で重任決議が可決され、議事録を作成したら、役員重任の登記を申請します。申請期限は、変更日から2週間以内となっていますので、決議成立後は速やかに必要書類を作成して、期限内に申請できるように手配する必要があります。登記申請書のひな形(テンプレート)は後ほど紹介します。役員重任の登記にかかる費用役員重任の登記を申請する際には、登録免許税や専門家への報酬に加え、郵送費などの費用が必要です。ここでは、役員重任の登記にかかる具体的な費用について解説します。 登記申請書類・必要書類の準備にかかる費用登記申請書や株主総会議事録などの必要書類作成を弁護士や司法書士など法律の専門家に依頼する場合、報酬が発生します。参考例として、日本司法書士連合会 2024年実施アンケートによると役員変更登記にかかる司法書士の報酬は3万円前後となっています。なお、会社の形態や作成する書類の種類によって金額は異なる場合がありますので専門家への相談時にご確認ください。一方、ひな形などを活用してこれらの必要書類を自分で作成する場合、書類作成にかかる費用を節約することができます。登録免許税役員変更登記を申請する際には、登録免許税の納付が必要です。金額は会社の資本金に応じて異なり、以下のとおりとなります:資本金が1億円以下の場合:1万円資本金が1億円を超える場合:3万円また、取締役や監査役など複数の役職の役員変更が同時に発生した場合や、選任決議や就任日が異なる場合でも、同時に申請する場合の納付金額は変わりません。納付方法としては、収入印紙を貼付するか、金融機関の窓口で納付書を使用して納付する方法があります。申請前に、収入印紙を購入するか、納付手続を完了しておくことが必要となります。オンラインで登記を申請する場合は、インターネットバンキングを利用した納付も可能です。その他の雑費また、申請や還付書類の送付には送料がかかります。(法務局へ直接訪問して申請書を提出したり、還付書類を受領する場合は、交通費が必要です)さらに、変更後の登記事項証明書や印鑑証明書を取得する際には手数料も発生します。役員重任の登記を自分で申請するための必要書類・ひな形法務局に役員重任の登記を申請する際には、登記申請書や株主総会議事録などの必要書類を準備します。ここでは、これら必要書類について詳しく解説します。役員重任登記の必要書類役員重任登記の必要書類は、以下のとおりです。登記申請書役員重任登記に必要な申請書です。記載方法は、「役員重任登記の必要書類テンプレートをダウンロード」を参考にしてください。株主総会議事録重任決議に関する株主総会の議事録を添付します。株主リスト株主総会時点での株主を記載したリストを提出します。代表取締役の選定を証する書類代表取締役を選定する方法に応じて、以下の書類を添付します:株主総会決議の場合: 2の株主総会議事録取締役会決議の場合: 取締役会議事録取締役の互選の場合: 互選書および定款就任承諾書重任する取締役または監査役の就任承諾書を添付します。ただし、開催された株主総会や取締役会の席上で就任を承諾した場合に、議事録にその旨の記載がある場合は添付不要です。代表取締役の場合、取締役としての承諾書と代表取締役としての承諾書が必要になる場合があるため注意が必要です。登記委任状登記手続を司法書士に委任する場合に必要です。委任状には会社の代表印を押印する必要があります。自社で申請を行う場合は不要です。役員が新たに就任する場合、本人確認書類や印鑑証明書、印鑑届書なども必要となる場合がありますが、役員重任登記では原則として不要です。役員重任登記の必要書類テンプレートをダウンロード登記申請書のひな形は、法務局のホームページからダウンロードすることができます。記入例も掲載されているため、自分で作成する際には参考にするとよいでしょう。参考リンク:法務局HP(取締役会設置会社で役員の全員が重任する場合) 記入例 申請書様式(word)役員重任登記は自分で申請することも可能だが注意も必要役員重任登記は、初めての方でも自分で必要書類を作成し、法務局で申請することも十分可能です。役員重任登記は、役員構成に変更がないため検討すべき事項も少なく、申請書や株主総会議事録などの必要書類も比較的簡単に作成することができます。必要書類の作成にあたっては、法務局のホームページで公開されているひな形や記入例を活用するとスムーズです。ただし、重任以外の役員変更と同時に行う場合などは手続や書類内容が複雑になるケースもあります。不安な場合は弁護士や司法書士など法律の専門家へのアドバイスも受けながら進めることもおすすめします。