「知らない間に自分の会社が解散していた」という話を聞いたことはありませんか?信じられないかもしれませんが、法律によって会社が解散させられてしまう制度があります。それが「みなし解散」です。事業を行うために法人(会社等)を設立すると、必ず、法務局に登記をします。法人の登記には、社名や本店所在地だけでなく、会社の目的や役員の氏名が登記されます。そして、役員が変わったときなど、登記の内容に変更が生じたときは法定の期限内に変更の登記をする義務が定められています。これら変更の登記をしないまま長期間放置してしまうと、法人が解散したとみなされてしまうのが「みなし解散」という制度です。本記事では、この「みなし解散」の制度や放置してしまうリスク、対処方法などについて解説します。GVA 法人登記のクーポン付メルマガを購読登記申請のタイミングは忘れた頃にやってくるものです。GVA 法人登記のメルマガでは、毎号割引クーポンを配布しております。登録フォームからぜひご購読ください。みなし解散とは?法人の登記の変更を忘れていたり、放置してしまったりしたことで生じる「みなし解散」。突然、法務局から通知が来てびっくりする方もいらっしゃるのではないでしょうか。まず「みなし解散」の制度について解説します。登記や届出をしない休眠会社が解散したとみなす制度「みなし解散」とは、長期間、役員変更等の登記すべき事項の登記をしないまま放置している休眠会社・休眠法人に対し、法務局が、「いついつまでに必要な登記をするか、もしくは、まだ事業を廃止していないという届出をしないかぎり、解散したものとみなす」という通知を送り、期限までに必要な登記または届出がなされないときは、その法人が解散したとみなされてしまう制度です。このみなし解散という制度は、株式会社だけでなく、一般社団法人や公益社団法人、公益財団法人も対象になります。株式会社の場合は12年間、一般社団法人や一般財団法人等は5年間、登記を行っていないときに、みなし解散の対象となります。これは、株式会社の場合、取締役の任期が最大10年であることから(会社法322条2項)、少なくとも10年に1回は役員変更等の登記をしなければならないのに、12年間登記の変更がないということは、もはや活動していない可能性が高い、と考えられているからです。なお一般社団法人や一般財団法人の場合、法律で理事の任期が2年とされているので、5年間登記がなされていないときに同様に判断されます。このように、役員や理事などの任期が基準となっているため、役員の任期のない有限会社や合同会社は、このみなし解散の制度の対象ではありません。そして、上記の期間内に登記の変更をしているかどうか、という基準だけで判断されるため、その法人が実際に活動しているかどうかという実態は考慮されないことにも注意が必要です。このみなし解散の制度は昭和49年に始まりましたが、平成26年以降は毎年行われており、毎年10月頃に対象となる法人に通知書が発送されます。令和6年度は、10月10日(木)に通知書の発送が行われました。法務省の発表によると、令和4年は約28,000件、令和5年は約27,000件の法人が、みなし解散の制度によって解散されたとみなされています(制度が始まった昭和49年から令和5年までに解散されたとみなされた法人の合計は70万件以上に及びます)。みなし解散の前後の流れでは、もしみなし解散の対象となった場合、その手続きはどのように進むのでしょうか?まず、みなし解散の対象となると、法務大臣による官報公告がなされ、「通知書」が法務局から発送されます。その通知書には、必要な登記または事業を廃止していない旨の届出を行うべき期限が記載されています。その期限は2か月以内の日が指定されます。令和6年度の場合、通知書が発送されたのは10月10日(木)で、期限はその2か月後の12月10日(火)が指定されていました。上記の期限までに、必要な登記の申請も行わず、または、事業を廃止していない旨の届出も行わなかったときは、12月11日(水)付でその法人は解散したものとみなされました。なお、この通知書が何らかの理由で届かなかったとしても、届出等を行わないまま期限を過ぎてしまうと、法人は解散したとみなされてしまうことにも注意が必要です。みなし解散がなされても、株式会社の場合、3年以内であれば、株主総会の特別決議によって会社を継続させることができますが(後ほど詳しく解説します)、逆に3年が経過してしまうと会社を継続させることができなくなってしまいます。みなし解散になったことは登記事項証明書で確認できるみなし解散になってしまうと、その旨が法人の登記事項証明書に記載されます。具体的には、「会社法第472条第1項の規定により解散」と記載されます。これは、法人の登記事項証明書を取ることで確認できます。このように、みなし解散となってしまったことは誰でも閲覧できる状態になりますし、その記載内容から、その他の理由による解散ではなくみなし解散であることが分かる状態になります。みなし解散を放置するリスクみなし解散を放置してしまったらどうなるのでしょうか。法務局の通知書が来ても何もしなかったとき、もしくは、そもそも通知書に気が付かずに放置してしまったときのリスクについて解説します。 みなし解散の制度がある理由そもそも、みなし解散の制度があるのは、下記のような理由があるからです。活動をしていない法人や実体のない法人が登記されたままだと登記の信頼性が低くなる活動していない法人(休眠会社等)が売買され、犯罪に利用される可能性がある。このような理由からみなし解散の制度が作られているため、みなし解散を放置すると会社運営における様々なリスクが生じます。放置するリスク①営業・取引ができなくなる先ほどご説明したように、みなし解散になってしまうと、登記にその旨が記載され、誰でも閲覧することができる状態になってしまいます。そのため、取引先や金融機関にもそのことが分かってしまう可能性があり、信用低下から、新規の取引を断られたり、取引を中断されてしまったりする可能性があります。また、建設業や警備業のように事業に許可が必要で、一定期間で更新が必要な業種においては、更新ができなくなってしまう可能性があることにも注意が必要です。放置するリスク②手続の手間・費用が発生するみなし解散を放置することで余計な手間や費用が発生することもあります。みなし解散となっても、すぐに会社の登記が閉鎖されるわけではないので、事業を継続しないのであれば、会社を清算する手続をしなければなりません。この場合、官報公告費用や登録免許税等がかかるだけでなく、自分で手続ができないときは、登記を代行してもらう司法書士等の費用が発生します。そして、清算手続中も確定申告が必要ですから、税理士費用もかかることになります。もし、仮に、会社を継続させるにしても、後で説明するとおり、事業を継続していない旨の届出を行うだけでなく、まず、清算人の登記を行い、さらに、会社継続の登記、役員変更の登記等が必要になるため、手間や費用が発生します。さらに、会社を継続する場合も、そうでない場合も、長期間登記を怠ってしたことに対して、過料という罰則が科せられることがあります。過料の通達が来た場合は、一定の金銭の納付を命じられます。この金銭の納付は、法人に対してではなく、代表者個人に対して課せられるものであることにも注意しましょう。みなし解散から復活・継続する方法みなし解散を放置してしまうと様々なリスクが生じ、余計な手間や費用がかかります。法務局からみなし解散の通知書が届いてしまったらどうすればよいのでしょうか。通知から2ヶ月以内なら届出書か登記申請みなし解散の通知書の発行日から2か月以内であれば、事業を廃止していない旨の届出を提出するか、放置していた役員変更等の登記の申請を行うことで、みなし解散を避けることができます。ただし、事業を廃止していない旨の届出を提出しただけでは、その年のみなし解散の対象から外れるだけで、必要な登記をしないままだと、次の年も通知書が来てしまいますから、なるべく早く、放置していた登記を行う必要があります。通知から2ヶ月を過ぎて3年以内なら会社継続の登記もし、みなし解散の通知書の発行日から2か月を経過してしまうと、仮に、通知書が届いていなかったとしても、法人は解散したとみなされてしまいますが、みなし解散から3年以内であれば、会社を復活させる方法があります。株式会社の場合、株主総会を開き、そこで、会社継続の特別決議を行い、株主総会から2週間以内に会社継続の登記をすることで、みなし解散になった会社を継続させることができます。ただ、その場合、既に解散の登記が入っているので、いったん清算人の登記等を行う必要があるので注意が必要です。みなし解散から3年経過すると復活できないこのように、みなし解散から3年以内であれば、法人を復活させることができますが、3年を経過してしまうと、もはや法人を復活させることはできず、清算手続を行うしかなくなってしまいます。具体的には、清算人を選任し、財残目録や貸借対照表等を作成した後、残っている債権の取り立てや債務の弁済を行い、残余財産を分配した後、決算報告を行い、清算決了登記を行うことになります。このように、みなし解散から3年が経過してしまうと、法人を復活させることはできなくなるため、もし事業を継続したいときは、一から法人を設立しなおすところからやり直さなければなくなります。事前にみなし解散を回避する方法は?みなし解散の対象となってしまうと、余計な手間や費用がかかるだけでなく、会社自体を継続させることができなくなってしまう可能性もあります。そのためには、みなし解散の対象にならないようにすることが大切です。みなし解散の対象とならないためには、役員の変更等、登記すべき事項に変更が生じたときは、速やかに登記を行うことが必要です。特に、役員の任期満了後同じ方が役員となる場合(重任)は役員が変わらないことから登記を忘れてしまいがちですが、任期満了の際には、必ず登記が必要であることを忘れないでおきましょう。知らない間に会社が解散してしまう「みなし解散」を避けるためにちょっと登記をするのを忘れてしまっていただけで、知らない間に会社が解散させられてしまうのがみなし解散の制度です。特に、みなし解散の通知書が届かなくても(みなし解散の対象となったことを知らなくても)、期限内に必要な手続きをしないとみなし解散になってしまいます。例えば、会社の本店所在地を引っ越していたのに登記変更しないままのようなときに、前の本店所在地に通知書が送られてしまって気がつかなかった、ということもあります。そもそもいつ登記が必要なのかわからない、登記手続の書類作成が難しい、という方もいらっしゃるかもしれません。弁護士や司法書士など法律の専門家にも相談しながらこのような手続ミスが起こらないように管理体制を構築していただければ幸いです。