企業が事業拡大や財務体質の強化を目的に資金調達を行う際、新株を発行して第三者や既存株主から出資を受ける「増資(募集株式の発行など)」は非常に有効な手段です。増資を行い、資本金や発行済株式数が増加した場合、管轄の法務局にて変更登記を行う必要があります。このとき、単に出資を受けて資本金や株式数を増やすだけであれば、原則として会社の根本規則である「定款」自体の変更は不要です。しかし、増資の規模、資金調達の手法、発行する株式の種類によっては、増資の実施前あるいは実施と同時に「定款変更」の手続きが法的に求められるケースが存在します。定款変更が必要となる場合、株主総会の特別決議など厳格な手続きを経なければならず、スケジュールや必要書類が大きく変わってきます。合同会社の増資・社員追加手続き株式会社とは異なり、合同会社(持分会社)における増資は、会社の構造上、手続きの前提が大きく異なります。合同会社は「所有と経営が一致」している企業形態であり、出資者(社員)がそのまま会社の経営に参加することを基本としています。合同会社において資本金を増加させる方法には、主に「既存の社員が追加で出資を行う場合」と「新たな出資者を迎え入れて新社員とする場合」の2つのパターンがあります。株式会社の増資では原則として定款変更が不要であるのに対し、合同会社の場合は、どちらのパターンであっても原則として定款の変更が必須となります。会社法上、合同会社の定款には「社員の氏名又は名称及び住所」および「社員の出資の目的及びその価額又は評価の標準」を記載しなければならないと定められています(絶対的記載事項)。新たに出資を受けて資本金が増加すれば、出資額の記載を変更せざるを得ませんし、新たな出資者が加入するのであれば、その者の氏名や住所を定款に追記しなければなりません。具体的な手続きとしては、まず定款変更を行うために、定款に別段の定めがない限り「総社員の同意」を得る必要があります。業務執行社員の過半数の決定などの簡易な手続きでは定款の変更はできず、全社員が同意したことを証する「総社員の同意書」を作成します。その後、出資金の払い込みを受け、払込証明書を作成したうえで、法務局へ資本金の額の増加(および社員の加入や業務執行社員の変更など)の登記申請を行います。定款に直接手を加える手続きが常に伴う点が、合同会社の増資における最大の特徴といえます。増資登記と定款変更の関係確認株式会社において、増資登記に伴って定款変更が必要になる主なケースは以下の4つに分類されます。自社の資金調達計画がこれらのケースに該当しないか、事前に確認しておくことが実務上のトラブルを防ぐ鍵となります。① 新株の発行により「発行可能株式総数」の上限を超える場合株式会社は、設立時やその後の手続きにおいて、自社が将来的に発行できる株式の最大数である「発行可能株式総数」を定款で定めています。増資によって新たに発行する株式の数が、現在設定されている発行可能株式総数の残り枠を超えてしまう場合、そのままでは新株を発行できません。この制約をクリアするためには、あらかじめ、または新株発行の決議と同時に定款を変更し、発行可能株式総数の上限を拡大(伸長)する手続きが必要です。発行可能株式総数の変更は定款変更にあたるため、株主総会の特別決議(議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成)を経る必要があります。② 権利内容の異なる「種類株式」を新たに発行して増資する場合投資家やベンチャーキャピタルから出資を受ける際、一般的な普通株式ではなく、配当や残余財産の分配、議決権の行使条件などに優先的・制限的な条件を付与した「種類株式」を発行する手法がよく用いられます。種類株式の権利内容や、その種類ごとの発行可能株式総数などは、定款に規定しなければ効力を生じません(相対的記載事項)。そのため、全く新しい設計の種類株式を発行して出資を募る場合には、新株の発行決議に先立って、種類株式の内容を定款に盛り込むための定款変更決議(株主総会の特別決議)が必要となります。③ 非公開会社が「株主割当増資」の決定機関を変更したい場合既存の株主に対して、現在の持株比率に応じて新株の引き受け権利を与える手法を「株主割当増資」と呼びます。すべての株式に譲渡制限を設けている非公開会社において、株主割当増資の募集事項(発行数や払込金額など)は、原則として「株主総会の普通決議」で決定しなければなりません。ただし、会社法上、定款に別段の定めを設けることで、募集事項の決定権限を取締役会設置会社であれば「取締役会」へ、取締役会非設置会社であれば「取締役の過半数」へと委譲することが認められています。迅速かつ機動的な資金調達を目指して決定機関を変更・移行したい場合は、定款変更によってその旨を規定する必要があります。④ 「利益剰余金」を資本金に組み入れる無償増資を行う場合第三者からの新たな金銭の払い込みを受けず、帳簿上の「その他利益剰余金」を資本金へ振り替えることで資本金を手厚くする手法です。これは資金の流入を伴わないため「無償増資」とも呼ばれます。その他利益剰余金を資本金に組み入れる手続き自体は、原則として株主総会の普通決議で足りますが、実務上、この資本組み入れと同時に「株式無償割当て」を行って新株を発行する場合、増加する株式数が発行可能株式総数を超えるときには、定款の変更(上限の拡大)が必要となります。自分で登記申請するための議事録作成に役立つテンプレートこれらの手続きを進めるにあたり、株主総会や取締役会での決議内容を正確に記録した「議事録」の作成は不可欠です。議事録は法務局への登記申請時における必須の添付書類となります。自分で登記申請を行う予定であれば、法的に要件を満たした書式を用意する必要があります。書式の準備には、無料でダウンロードできる「GVA 法人議事録」のテンプレートの活用が効果的です。定款変更を伴う株主総会の特別決議や、新株発行に関する取締役会決議など、実務に即したひな形が揃っており、必要事項を穴埋めするだけで登記に耐えうる正確な議事録をスムーズに作成できます。定款変更の費用・手続き定款変更や新株発行を決定した後は、会社法で定められた厳格な期限内に法務局での登記手続きを完了させなければなりません。手続きの遅れは会社や経営者に対して不利益をもたらすため、タイムスケジュールと発生する費用(登録免許税)を事前に把握しておく必要があります。手続きの期限と過料(ペナルティ)のリスク増資(募集株式の発行など)や定款変更の効力が発生した日(増資の場合は出資金の払込期日または払込期間の末日)から、2週間以内に管轄の法務局へ変更登記を申請する義務があります。この2週間の期限を徒過してしまった場合、「登記懈怠(とうきけたい)」という状態に陥ります。登記懈怠のまま放置したり、遅れて申請したりすると、裁判所から会社の代表者個人に対して最大100万円の過料(制裁金)が科されるリスクが生じます。この過料は会社の経費ではなく代表者個人の負担となるため、増資の決定から出資金の払込、議事録の作成、登記申請に至るまで、スケジュールに十分な余裕を持たせて適法に手続きを進めることが求められます。費用(登録免許税)への影響法務局へ登記を申請する際には、国へ納める税金として「登録免許税」が発生します。増資のみを行う場合と、増資に加えて定款変更(発行可能株式総数の変更など)を行う場合とで、納付すべき税額が異なります。増資登記単体にかかる登録免許税は、原則として「増加する資本金の額の1000分の7(0.7%)」です。ただし、計算した金額が3万円を下回る場合は、最低税額として一律3万円となります。たとえば、資本金を300万円増加させる場合、0.7%は2万1千円ですが、3万円に満たないため納付額は3万円です。資本金を1,000万円増加させる場合は7万円となります。増資と同時に「発行可能株式総数の変更(定款変更)」の登記も申請する場合は、上記の増資に関する登録免許税に加えて、定款変更(変更の登記)の登録免許税としてさらに3万円が加算されます。つまり、最低でも合計6万円の印紙代が必要となる計算です。GVA 法人登記なら増資や定款変更の手続きをスムーズに完結株式会社の増資の登記は、本店移転などに比べると手間がかかる印象をお持ちの方も多いのではないでしょうか?資本金額や株式数に変化が生じたりと、専門知識が求められることもあります。とはいえ、士業など専門家にお願いするとしてもやりとりに意外に手間がかかるもの・・・でも社内では自分(=代表者や役員)が対応するしかない、という方も多いのではないでしょうか?GVA 法人登記なら、申請する登記に合わせた変更情報を入力すれば手続きに必要な書類を最短7分、12,000円(税別)で自動作成。法務局に行かずに申請できます。通常の増資に加え、DES(債務や貸付金の株式化)にも対応しています。書類作成だけでなく、印刷や製本、登記反映後の登記簿謄本(登記事項証明書)の取得をサポートするオプションプランも充実。申請に必要な収入印紙もセットで購入できるので、増資額が大きい場合の印紙購入があっても安心です。