会社を経営していると、事業の拡大やブランドイメージの刷新など、さまざまな理由で会社の名前(社名)を変更する必要が生じます。この社名は会社法上は「商号」と呼び、商号を変更することを「商号変更」と呼びます。商号変更の手続には、株主総会での決議や法務局への登記申請など、いくつかのステップがあります。これらの手続は、専門家に依頼することもできますが、内容を理解すれば、自分で申請することも可能です。この記事では、株式会社における商号変更の手続について、必要な書類や手続の流れ、注意点などを詳しく解説します。商号変更を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。GVA 法人登記のクーポン付メルマガを購読登記申請のタイミングは忘れた頃にやってくるものです。GVA 法人登記のメルマガでは、毎号割引クーポンを配布しております。登録フォームからぜひご購読ください。商号変更とは?ここでは、基本的な知識や手続の必要性と注意点など、商号変更に関する理解を深め、適切な手続ができるように解説します。商号(社名)は会社設立時に登記される商号とは、会社を識別するための名称であり、一般的には「会社名」や「社名」と呼ばれています。法人を設立する際には、会社の基本的なルールを定めた「定款」に商号を明記し、公証役場で認証を受けます。そして、この定款の内容に基づいて設立登記を申請することで、商号は法務局に正式に登記され、登記簿に記載されます。社名変更することを、正式には商号変更と呼びますが、ケースに応じて法人名変更や事業者名変更などといわれることもあります。登記簿は、会社の基本的な情報が書かれたものであり、会社の住所や資本金・役員などの情報と共に、商号も重要な項目の1つとして記載されます。商号は、取引先や顧客との契約書・請求書・名刺など、さまざまなビジネスシーンで使用されるため、会社にとって非常に重要なものです。商号(社名)を変更した際には登記申請が必要商号の変更は、会社の重要な決定事項であるため、法律で定められた手続に従って行う必要があります。具体的には、取締役会などを経て株主総会での決議を行うことが必要です。社長の思いつきや社内会議だけで勝手に変更することはできませんので注意が必要です。商号変更は、形式上は「定款に記載されている商号を変更する」という手続になり、商号を変更した後、2週間以内に法務局へ登記申請を行うことが法律で義務付けられています。期限内に手続を行わない場合は、過料の支払いが科せられる可能性もありますので注意が必要です。商号(社名)変更の理由・背景商号変更の理由・背景としては、以下がおもな例としてあげられます。①M&A(企業合併・買収)他の会社と合併したり、買収されてグループ入りした場合に、新たな商号に変更することがあります。例:東京三菱銀行+UFJ銀行→三菱UFJ銀行②リブランディングブランドイメージを一新したり、認知度の高い商品やブランド名を新たな商号に変更することがあります。長い社名や漢字のみの社名を読みやすくするようなケースもあります。例:松下電器産業株式会社→パナソニック株式会社、日本電装株式会社→株式会社デンソー③事業内容の変更事業内容が大きく変わった場合、それを反映するために商号を変更することがあります。例:富士写真フイルム株式会社→富士フイルムホールディングス株式会社「特例有限会社の商号変更による株式会社設立」との違い有限会社から株式会社へ組織変更する場合、登記申請上は「商号変更による株式会社設立」と呼ばれます。これは、有限会社から株式会社へと法人種類が変わることを指します。一般的な商号変更とは異なりますので、混同しないようにご注意ください。株式会社における商号変更の手続株主総会決議を行った後に登記申請の手続が必要まず、会社内での変更手続として、商号変更を行うための社内的な承認を得る必要があります。商号は、会社の基本的な情報であり、定款に記載されています。商号を変更するには、この定款を変更する必要があり、そのためには株主総会での決議が必要となります。次に、法務局への登記申請は、商号変更を社会に公示するための手続です。必要な書類を法務局に提出することで、商号変更が登記簿に記録され公示されます。商号変更の株主総会決議商号変更を行うには、前述の通り定款を変更する手続が必要となります。定款は、会社の目的や組織、運営方法などを定めた基本的な規則であり、もちろん商号も定款に記載されています。そのため、商号を変更するには定款の変更手続が必要となり、株主総会の決議が必須となります。株主総会は、会社の最高意思決定機関であり、株主が出席して会社の重要事項について決議を行う会議です。商号変更のような重要な事項を決定するには、株主総会で適切な決議を行う必要があります。なお、株主総会を招集するために取締役決定(取締役会非設置会社の場合)もしくは取締役会での決議も必要になります。株主総会の決議には、普通決議、特別決議、特殊決議の3種類があります。普通決議議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数の賛成で成立する特別決議議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成で成立する特殊決議①議決権を行使できる株主の半数以上かつ②当該株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要。議決内容によってはさらに厳しい要件になる商号変更は定款の変更を伴うため特別決議が必要で、株主総会を開催し、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成を得て、定款変更の決議を行います。株主総会で定款変更の決議が可決されたら、その内容を記載した株主総会議事録を作成します。議事録は、株主総会でどのような決議が行われたかを証明する重要な書類であり、登記申請の際に必要となります。法務局に登記申請株主総会で定款変更の決議を行い、株主総会議事録を作成したら、法務局へ登記申請を行います。登記申請は、株主総会決議の日の翌日から2週間以内に手続を行う必要があります。期限を過ぎてしまうと過料となる可能性がありますのでご注意ください。登記申請は、自分で書類を作成して行うこともできますし、専門家に依頼して手続を代行してもらうこともできます。法律の専門家に登記申請を依頼すると手続をスムーズに進めることができますが、依頼する場合は報酬が必要となります。商号変更登記の登録免許税商号変更登記の登録免許税は、会社の規模や変更内容、申請方法などに関わらず、一律3万円です。登録免許税の支払いは、収入印紙を貼付する方法で行うこともできます。また、オンラインで登記申請する場合は、インターネットバンキングを利用して登録免許税を納付します。商号変更の登記申請の必要書類商号変更の登記申請は、必要な書類をそろえて法務局に提出することで行います。ここでは、それぞれの書類の内容や役割、注意点などを詳しく解説します。登記申請に必要な書類商号変更の登記申請には、以下の書類が必要です。①登記申請書登記申請書は、登記内容を変更するために法務局に提出する書類です。②株主総会議事録株主総会で商号変更のための定款変更の決議が行われたことを証明する書類です。株主総会議事録には、株主総会の開催日時、決議内容などが記載されます。③株主リスト株主総会決議当時の株主の氏名や住所、議決権数などを記載した書類です。④委任状委任状は、法律の専門家に商号変更の登記申請を委任する場合に必要な書類です。⑤印鑑届書商号変更と同時に、法務局に届け出ている印鑑を変更する場合に提出する書類です。会社は、法務局に印鑑を届け出ており、商号変更に伴い印鑑も変更する場合は、印鑑届書を提出して新しい印鑑を登録する必要があります。⑥代表取締役の印鑑証明書商号変更と同時に、法務局に届け出ている印鑑を変更する場合に提出する書類です。印鑑届書とあわせて、代表取締役の印鑑証明書を提出します。商号変更の必要書類のひな形(テンプレート)商号変更の登記申請に必要な書類のひな形は、法務局のWEBサイトで配布されています。これらのひな形をダウンロードして、必要事項を記入することで、自分で書類を作成できます。申請書はWordやPDF、記載例はPDFでダウンロードできますので、都合の良い形式で利用できます。申請書をWordでダウンロードして、記載例を見ながら、自分で作成することも可能です。自分で書類を作成する場合は、記載漏れや誤字脱字がないように注意する必要があります。不備がある場合は、修正が発生したり登記申請が受理されない可能性があります。もし、書類作成に不安がある場合は、法律の専門家に相談・依頼することも検討しましょう。参考リンク:法務局「商業・法人登記の申請書様式(3 商号・目的の変更、本店移転)」商号変更登記を自分でする場合は不備や必要書類の添付漏れに要注意商号変更は、企業のブランドイメージや事業戦略に大きな影響を与える重要な決断です。そのため、法的な手続を適切に行う必要があります。自分で手続を行う場合は、必要書類の記載漏れや誤字脱字などに注意し、不明な点があれば法務局に問い合わせることをおすすめします。もし、手続に不安を感じる場合は、法律の専門家に相談することも有効な手段です。商号変更は、企業の新たなスタートを切るための重要な一歩です。この記事が、商号変更を検討されている企業の皆様にとって、手続を円滑に進めるための一助となれば幸いです。