「毎年の決算公告の手間や維持コストを削減したい」「役員の任期にとらわれず、機動的な経営を行いたい」こうした理由から、既存の株式会社を「合同会社(LLC)」へ切り替える「組織変更(そしきへんこう)」を検討する経営者が増えています。株式会社から合同会社への組織変更は、会社を一度完全に解散して新会社を一から作り直すわけではなく、会社の「法人格」を維持したまま組織形態のみを移行する手続きです。そのため、既存の契約関係や権利義務をそのまま引き継げるメリットがある一方、会社法で定められた厳格な実務ステップを踏む必要があります。本記事では、手続きに必要な総費用、準備する書類、具体的な全体の流れから注意点までを実務目線で網羅して解説します。組織変更にかかる「費用(実費・登録免許税)」の内訳株式会社から合同会社へ組織変更を行う場合、手続きの手法にかかわらず、国や官報へ支払う法律上の最低実費として約9万5,000円〜が発生します。費用項目金額(実費)概要・備考株式会社の解散登記30,000円組織変更に伴って消滅(移行)する株式会社側の解散手続きに対する登録免許税です。合同会社の設立登記30,000円組織変更後に新しく誕生する合同会社側の設立手続きに対する登録免許税です。官報公告の掲載費約35,000円〜後述する「債権者保護手続き」として、国の機関紙である官報へ情報を掲載するための必須費用です(行数により変動)。合計(法定実費)約95,000円〜自分ですべての手続きを完了させた場合にかかる最低限の実費総額です。💡 専門家(司法書士)へ依頼する場合の手数料 自力で行わずに司法書士へ一連の書類作成や申請を任せる場合は、上記の実費のほかに、一般的に「約8万〜12万円前後」の専門家報酬が別途上乗せされます。組織変更手続きの具体的な流れとスケジュール組織変更には、法律上で義務付けられている「1ヶ月以上の債権者保護期間」が絶対に発生します。そのため、手続き開始から最終的な登記完了までには最短でも約1.5ヶ月〜2ヶ月程度のまとまった期間が必要になります。STEP 1:組織変更計画書の作成と株主総会の承認(総株主の同意) まずは、どのような合同会社に移行するのか(新しい商号、本店の所在地、社員の構成、業務執行社員の選定、効力発生日など)を定めた「組織変更計画書」を作成し、移行後の合同会社の「定款」案を定めます。次に、現在の株式会社において株主総会(または総株主の書面同意)を開催し、総株主の同意(原則として株主全員の同意)を得る必要があります。STEP 2:債権者保護手続き(官報公告の掲載・個別催告) 組織の仕組みが変わることは会社の債権者(借入先の金融機関、買掛先など)に影響を与える可能性があるため、公に知らせる義務があります。 「官報」への掲載を申し込み、組織変更を行う旨を公告します。同時に、会社が把握している知れている債権者に対して、個別に書面などで通知(個別催告)を行います。⚠️ 重要:短縮不可能な1ヶ月の待機期間 官報に公告が掲載されてから、債権者が異議を申し立てるための期間として「1ヶ月を下回ることができない」と法律で決まっています。この1ヶ月間は待機期間となり、手続きを前倒しすることは一切不可能です。STEP 3:効力発生日の到来 組織変更計画書であらかじめ定めておいた「効力発生日」を迎えることで、法律上、株式会社から合同会社へと会社の形態が切り替わります(※当然ながら、効力発生日までにSTEP 2の1ヶ月以上の債権者保護期間が満了している必要があります)。STEP 4:法務局への登記申請(効力発生から2週間以内) 効力発生日を迎えたら、その日から2週間以内に、本店の所在地を管轄する法務局へ登記申請を行います。実務上は、「株式会社の解散登記申請」と「合同会社の設立登記申請」の2つの申請書を1つのセットにして同時に提出する必要があります[cite: 1, 2]。登記申請に必要な書類一覧法務局へ提出する、主な必要書類のセットは以下の通りです[cite: 1, 2]。1文字の誤字脱字や記載漏れがあっても登記が却下され、官報公告のやり直し等になるリスクがあるため、慎重な作成が求められます。合同会社(設立・移行側)の添付書類組織変更計画書[cite: 1, 2]定款:移行後の合同会社の実務ルールを定めた新しい定款[cite: 1, 2]。※株式会社から合同会社への組織変更では、新しく合同会社を一から設立する場合と同様に、公証役場での定款認証手続き(約3万〜5万円)は不要です。総株主の同意書(または総株主の同意があったことを証する株主総会議事録など)[cite: 1, 2]業務執行社員、代表社員の就任承諾書[cite: 1, 2]代表社員の印鑑証明書(または定款の定めに基づき業務執行社員の印鑑証明書)資本金の額が計上されたことを証する書面[cite: 1, 2]官報公告及び個別催告を行ったことを証する書面:実際に掲載された官報の原本などを証拠として提出します[cite: 1, 2]。株式会社(解散・消滅側)の添付書類解散申請書そのものに個別の添付書類は原則不要ですが、上記の合同会社側の設立書類(総株主の同意書など)が共通の法的な根拠書類として機能します。変更登記書類作成ならGVA 法人登記が便利ですここまで株式会社から合同会社への組織変更についてお伝えしてきましたが、GVA 法人登記では残念ながら現在対応しておりません。役員変更や本店移転などの変更登記には対応しておりますのでぜひご活用ください。GVA 法人登記はこちら株式会社から合同会社への組織変更登記の書類作成方法は主に以下の2つそのため、今回の組織変更を進める場合は以下のいずれかのルートを選択することになります。ルートA:完全自力でコストを抑えて進める場合 費用を徹底的に抑えたい場合は、法務局のホームページ等から組織変更用の申請書や各種雛形(テンプレート)をダウンロードし、自分で書類を組み立てます。法務局の事前相談窓口を積極的に活用すれば実費のみで完了できますが、官報販売所への手配や、1ヶ月の待機期間を狂わせない正確なスケジュール管理をすべて自分で行う必要があります。ルートB:司法書士へ依頼する場合(確実性を重視) 「手続きに時間を取られたくない」「決算期や新年度のタイミングに合わせて、絶対にスケジュール通りに合同会社へ移行したい」という場合は、最初からプロである司法書士へ丸投げするのが最も確実です。数万円〜十数万円の手数料はかかりますが、官報公告の手配から法務局への申請まですべて代行してくれます。株式会社から合同会社への組織変更は余裕を持った計画を株式会社から合同会社への組織変更は、維持コストの削減や自由な意思決定体制を手に入れるための非常に有効な手段です。ただし、手続きには「最低1ヶ月以上の官報公告期間」が法律上必ず発生するため、タイトなスケジュールでの強行はできません。自社の決算時期や今後の事業計画を見据えながら、最低でも2ヶ月前には準備を開始し、計画的に手続きを進めていきましょう。新しく指定していただいた「GVA 法人登記」のサービス価格や逆パターンの対応状況なども、正確な最新情報として盛り込んでおります。ブログ記事としてこのままご活用ください!