会社の設立時や契約手続き、銀行口座の開設など、ビジネスの重要な局面で提出を求められるのが商業登記簿謄本です。しかし、実際に法務局や取引先、専門家から提出を求められた際、履歴事項全部証明書という別の名称を使われて戸惑った経験を持つ方も少なくありません。この記事では、商業登記簿謄本と履歴事項全部証明書の言葉の違いや、現在発行できる書類の種類、そしてオンラインを中心とした具体的な取得方法について分かりやすく解説します。商業登記簿謄本と履歴事項全部証明書の言葉の違い実務上、同じ意味として使われることが多いこれら2つの言葉ですが、厳密には法律上の定義や時代の変遷による違いがあります。商業登記簿謄本はかつての紙運用の名残商業登記簿謄本とは、かつて法務局がすべての登記情報を紙のファイル(登記簿)で管理していた時代の呼び名です。その原本をコピー(謄写)して作成した証明書という意味で、謄本と呼ばれていました。現在でもその名残で、会社の登記事項を証明する書類全般を総称して登記簿謄本と呼ぶ習慣が残っています。履歴事項全部証明書は現在のコンピュータ管理下の正式名称全国の法務局で情報がコンピュータ化された現代において、商業登記簿謄本の正式な後継にあたるのが履歴事項全部証明書です。磁気ディスクに記録された登記情報のうち、現在の有効なデータだけでなく、「請求日の3年前の属する年の1月1日以降」(社名の変更や役員の交代など)も含めてすべてを証明する書類という意味を持っています。そのため、窓口で登記簿謄本をくださいと申し出ると、現在は自動的にこの履歴事項全部証明書が交付されます。現在法務局で発行できる主な登記事項証明書の種類法人の登記証明書には、利用目的に合わせていくつか種類が存在します。実務で求められる書類を間違えないよう、それぞれの特徴を把握しておきましょう。履歴事項全部証明書現在の有効な登記事項に加え、請求があった日の3年前の日の属する年の1月1日から請求日現在の変更履歴(本店移転や役員変更、資本金の増額など)がすべて記載されている書類です。一般的な契約手続きや官公庁への提出では、この書類を指定されるケースがほとんどです。現在事項全部証明書請求したその時点で、現在効力を有する登記事項のみを抜粋して記載した証明書です。過去に移転した住所や、すでに退任した過去の役員情報などは記載されないため、現在の最新ステータスだけをシンプルに証明したい場合に使用します。閉鎖事項全部証明書本店移転によって管轄の法務局が変わった場合や、会社を解散・清算して登記が閉鎖された場合など、過去の閉鎖された登記記録のみを証明するための書類です。通常のビジネス取引で求められることは滅多にありませんが、古い歴史的な経緯を証明する必要がある場合に個別に取得します。履歴事項全部証明書をオンラインで取得する4つの方法履歴事項全部証明書などの登記事項証明書は、法務局の窓口で取得する方法が一般的ですが、現在ではインターネットから請求・取得することも可能です。提出先によっては公印付きの正式な証明書が必要な場合もあれば、登記内容を確認できれば十分なケースもあります。そのため、取得方法を選ぶ際は、利用目的や料金、利便性を比較することが大切です。ここでは、オンラインで利用できる代表的な4つの方法を紹介します。① 登記情報提供サービス一般財団法人 民事法務協会が提供するサービスです。登記情報をオンラインで閲覧でき、1通330円から利用できます。請求後すぐに内容を確認できる点がメリットです。ただし、公印が付されていないため、公的な証明書としては利用できず、契約先や金融機関への提出には使用できません。また、初回登録時には審査が必要で、利用時間にも制限があります。② 法務省「かんたん登記・供託申請」法務省のオンラインシステム(登記ねっと)から正式な登記事項証明書を請求する方法です。オンラインで申請し、郵送または法務局窓口で証明書を受け取ることができます。料金は1通480円からと比較的安価ですが、利用時間は平日のみで、利用環境によっては専用ソフトや電子証明書の設定が必要になる場合があります。③ GVA 登記簿取得GVA TECH株式会社が提供するオンライン請求サービスです。メールアドレスだけで登録でき、会社名を検索して必要な証明書を選択するだけで請求できます。パソコンだけでなくスマートフォンにも対応しており、24時間365日いつでも手続きが可能です。また、証明書が郵送で届く前にPDFで内容を確認できるため、急ぎで内容を確認したい場合にも便利です。料金は送料や各種手数料を含めて1通780円からで、国のオンライン申請より費用は高くなりますが、「設定の手間をかけずに申請したい」「営業時間を気にせず手続きしたい」という方に適しています。④ Graffer 法人証明書請求株式会社グラファーが提供していたオンライン請求サービスです。メールアドレスまたはSNSアカウントで登録でき、スマートフォンからも利用できるサービスでした。なお、2025年6月をもってサービスを終了しており、現在は利用できません。法人登記事項証明書オンライン取得サービス比較比較項目登記情報提供サービスかんたん登記・供託申請GVA 登記簿取得Graffer 法人証明書請求運営主体一般財団法人 民事法務協会法務省GVA TECH株式会社株式会社グラファー利用時間平日8:30~23:00土日祝8:30~18:00平日8:30~21:0024時間365日24時間365日スマートフォン対応利用可能利用環境によって制約あり対応対応アカウント登録・利用開始利用登録・審査が必要利用環境の設定が必要な場合ありメールアドレスで登録メールアドレスで登録料金の目安330円~480円~780円~(送料・手数料込み)(サービス終了前は622円~)利用目的に応じた取得方法の選び方どの方法が適しているかは、証明書の利用目的によって異なります。登記事項を確認するだけであれば、登記情報提供サービスが費用を抑えられます。一方、契約や銀行口座開設などで提出用の正式な証明書が必要な場合は、法務省の「かんたん登記・供託申請」や民間サービスを利用することになります。特に、平日に法務局の受付時間内で手続きをするのが難しい場合や、専用ソフトの設定などをできるだけ避けたい場合は、24時間申請できる「GVA 登記簿取得」などのオンラインサービスを利用することで、場所や時間を選ばず手続きを進められます。