株式会社が役員変更や目的変更の登記を申請する際、必ず作成しなければならないのが「登記すべき事項」です。項目数が多い場合や記載事項が複雑な場合には、申請書とは別にA4用紙の「別紙」を用意して提出するのが一般的ですが、書式や記載ルールを誤ると法務局から補正を求められることもあります。この記事では、株式会社の役員変更・目的変更登記を対象に、「登記すべき事項」の別紙の書き方や用紙について解説します。「登記すべき事項」とは?「登記すべき事項」とは、商業登記法や会社法の規定により登記が義務付けられている(または任意に登記できる)内容のうち、実際に変更登記申請書に記載する項目のことです。会社設立時の登記すべき事項は、「目的」「商号」「本店の所在場所」「資本金の額」「取締役の氏名」「代表取締役の氏名及び住所」など、必ず登記が必要な事項と、株式の譲渡制限や取締役会設置の定めなど、定款などに定めがある場合に限り登記が必要な事項に分かれます。会社設立時にはこれらすべての項目をまとめて記載する必要がありますが、設立後に発生する変更登記では、変更が生じた項目についてのみ「登記すべき事項」を記載します。本記事で扱う役員変更登記では「役員に関する事項」(資格・氏名・住所・原因年月日)が、目的変更登記では「目的」(変更後のすべての事業目的・原因年月日)が、それぞれ登記すべき事項の対象になります。いずれも、変更が生じた事実と発生日の記載が必要です。「登記すべき事項」の作成・提出方法役員変更・目的変更の変更登記において、「登記すべき事項」を法務局に提出する方法は主に3つあります。①別紙による提出登記申請書の「登記すべき事項」欄に直接記載する方法のほか、記載項目が多い場合はA4用紙に登記すべき事項のみをまとめた別紙を作成し、申請書と合綴して提出することができます。この場合、申請書の「登記すべき事項」欄には「別紙のとおり」と記載します。別紙の書式に決まったフォーマットはありませんが、法務局のホームページで公開されている記載例(PDF)を参考に、見出しごとに項目を整理して記載するのが一般的です。役員変更で対象者が複数いる場合は、「役員に関する事項」のブロックを人数分繰り返して記載します。②オンラインによる提出法務省の「登記・供託オンライン申請システム」を利用できる場合、登記すべき事項をオンラインで直接入力して提出できます。この場合、電子署名は不要ですが、申請書自体は別途書面で提出する必要があります(半オンライン方式)。③CD-R等の電磁的記録媒体による提出登記すべき事項をテキストファイルとしてCD-RやDVD-Rに記録し、申請書とあわせて提出する方法です。この場合、媒体そのものが申請書類の一部となるため、紙に印刷したものを別途添付する必要はありません。申請書の「登記すべき事項」欄には「別添CD-Rのとおり」などと記載します。専門家以外が変更登記を行う場合、環境準備の手間がかからない①の別紙による提出が最も利用しやすい方法です。役員変更の「登記すべき事項」の記載例役員変更登記の登記すべき事項は、「役員に関する事項」として「資格」「氏名」(代表取締役の場合は「住所」も)「原因年月日」を記載します。主な手続きごとの記載例は以下のとおりです。就任(新任)新たに取締役や監査役に就任した場合の記載例です。「役員に関する事項」 「資格」取締役 「氏名」〇〇〇〇 「原因年月日」令和〇年〇月〇日就任辞任任期途中で役員が自らの意思により退任した場合、原因を「辞任」と記載します。「役員に関する事項」 「資格」取締役 「氏名」〇〇〇〇 「原因年月日」令和〇年〇月〇日辞任退任(任期満了)任期満了により後任を選任せず、または欠員のまま役員が退いた場合は「退任」と記載します。「役員に関する事項」 「資格」取締役 「氏名」〇〇〇〇 「原因年月日」令和〇年〇月〇日退任重任任期満了と同時に、同じ役職に引き続き就任する場合は「重任」と記載します。退任と就任を同時に行ったものとして扱われるため、別々に記載する必要はなく「重任」の一本で足ります。役員全員が重任する場合は、対象者ごとにブロックを繰り返します。「役員に関する事項」 「資格」取締役 「氏名」〇〇〇〇 「原因年月日」令和〇年〇月〇日重任代表取締役が重任する場合は、住所も併せて記載します。「役員に関する事項」 「資格」代表取締役 「住所」〇県〇市〇町一丁目二番三号 「氏名」〇〇〇〇 「原因年月日」令和〇年〇月〇日重任死亡役員が在任中に死亡した場合は、原因を「死亡」と記載します。「役員に関する事項」 「資格」取締役 「氏名」〇〇〇〇 「原因年月日」令和〇年〇月〇日死亡なお、辞任・死亡による退任と後任者の就任は、同一の変更登記としてまとめて申請することができます。代表取締役が退任し新たな代表取締役が就任する場合は、退任する代表取締役の記載(登記されている住所を記載)と、新たに就任する代表取締役の記載(新住所を記載)の両方が必要です。あわせて、その者が取締役の地位も退く場合には、取締役の退任についても別途記載します。目的変更の「登記すべき事項」の記載例目的変更登記の登記すべき事項は、「目的」として変更後のすべての事業目的と、「原因年月日」として変更が生じた日(原則として株主総会で決議した日、または株主総会で定めた効力発生日)を記載します。ここで注意すべきなのは、変更・追加する目的だけを記載するのではなく、変更後に会社が登記する目的の全項目を記載しなければならない点です。一部の目的だけを記載してしまうと、既存の目的が消えてしまったものと扱われるおそれがあるため、必ず変更前からの目的も含めて全体を記載します。たとえば、現在の目的が「①自動車の販売」「②レストランの経営」「③古物商」「④前各号に関連する一切の事業」であり、今回、①に「輸出入」を加え、②を「飲食店の経営」に改め、③を廃止し、新たに「損害保険代理業」を追加する場合、登記すべき事項は次のように記載します。「目的」 1 自動車の輸出入及び販売 2 飲食店の経営 3 損害保険代理業 4 前各号に関連する一切の事業 「原因年月日」令和〇年〇月〇日変更なお、目的の変更には株主総会の特別決議による定款変更が必要です。決議の際に目的変更の効力発生日を別途定めた場合はその日付を、特に定めなかった場合は株主総会開催日を「原因年月日」として記載します。日付を誤ると登記記録と株主総会議事録の内容が食い違い、補正の対象となるため、議事録の記載と別紙の記載を突き合わせて確認しましょう。まとめ役員変更・目的変更いずれの登記でも、「登記すべき事項」は法務局が定める形式に沿って一字一句正確に記載する必要があります。とくに役員変更では就任・辞任・退任・重任・死亡といった原因ごとに記載内容が変わり、目的変更では変更後の目的をすべて記載しなければならない点が間違えやすいポイントです。別紙で提出する場合は、法務局の記載例をひな形にしながら、自社の変更内容に合わせて正確に作成しましょう。不明な場合は司法書士などの専門家への相談も有効です。GVA 法人登記で変更登記の必要書類を自分で作成「登記すべき事項」は変更登記において必ず作成が必要書類です。GVA 法人登記なら、変更したい情報を入力することで登記申請書や議事録、その他の添付書類などの必要書類を作成し自分で準備できます。郵送申請や登記簿謄本の取得、収入印紙の購入をサポートするオプションも充実しています。手間や時間、費用のバランスを取りながら確実に登記申請したい方におすすめのサービスです。