会社設立時、あるいは設立間もない時期にジョインした共同創業者や初期メンバーが取締役を辞任するケースは、スタートアップでは十分ありえます。残念ではあるものの、辞任が決まった以上は必要な手続きを速やかに進める必要があります。取締役は登記簿謄本(登記事項証明書)に記載される事項のため、取締役が辞任した場合は役員変更の登記申請が必要になります。これは会社法によるルールであり、省略することはできません。また、登記申請には辞任の効力が発生した日(辞任届が会社に到達した日)から2週間以内という期限があります。本記事では役員(取締役)辞任の登記について必要な手続きや書類について解説します。辞任自体の手続きに決議は不要だが人数に注意辞任自体に取締役会・株主総会の決議は不要取締役の辞任は、辞任する本人が会社に対して「辞任する」という意思を表示することで効力が生じます。就任時には株主総会の決議が必要でしたが、辞任はそれとは異なり、本人の意思表示だけで成立します。なお、口頭でも法的には有効ですが、登記手続きに使う書類として「辞任届」を書面で作成・提出するのが実務上の正しい流れです。後任の取締役を選任する場合は別途、株主総会の決議が必要になります。この点は後述します。設立間もないスタートアップは役員人数に要注意辞任自体は手続きがシンプルな一方で、創業期のスタートアップでは役員の定員・必要人数への影響を見落としがちです。株式会社(非公開会社・譲渡制限会社)の取締役は最低1名以上が必要です。また、取締役会を設置している会社では最低3名の取締役が必要です。(これよりも多い人数にすることも可能)辞任によってこの最低人数を下回る場合、辞任した取締役は「権利義務取締役」として、新しい取締役が就任するまでの間、引き続き取締役としての権利と義務を持ち続けます。つまり、辞任届を出しても法的にはすぐに役員を外れられないケースがあります。さらに、後任の選任が完了するまでは辞任登記の申請が法務局に受理されないため、後任の選任が必要な場合は先に株主総会を開催して後任を決めてから登記申請を行う流れになります。設立時から取締役が定数ちょうどだった場合、1名が辞任すれば即座に欠員状態になります。創業期のスタートアップにはよくある構成ですので、辞任の話が出た時点で後任の選任についても同時に検討を始めることが重要です。取締役辞任登記の手続きと必要書類手続きの流れ【後任選任なし:辞任のみのケース】辞任する取締役が辞任届を作成・提出変更登記申請書を作成法務局へ登記申請(辞任効力発生日から2週間以内)【後任選任あり:辞任+新取締役就任のケース】辞任する取締役が辞任届を作成・提出株主総会を開催して後任取締役を選任し、議事録を作成新取締役の就任承諾書を取得株主リストを作成変更登記申請書を作成法務局へ登記申請必要書類一覧辞任のみの場合書類備考変更登記申請書登記の事由「取締役の変更」と記載辞任届辞任する取締役が署名・押印委任状司法書士などに申請を委任する場合のみ後任の選任がある場合(取締役会非設置会社)書類備考変更登記申請書辞任届株主総会議事録後任取締役選任の決議を記載株主リスト就任承諾書新取締役の個人実印による押印が必要印鑑証明書新取締役のもの委任状代理申請する場合のみ後任の選任がある場合(取締役会設置会社)書類備考変更登記申請書辞任届株主総会議事録株主リスト就任承諾書認印可本人確認書類住民票の写しまたは運転免許証・マイナンバーカードのコピー委任状代理申請する場合のみ変更登記申請書の書き方申請書には以下の項目を記載します。会社法人等番号:わかる場合のみ記載商号:会社名本店:本店所在地登記の事由:「取締役の変更」登記すべき事項:「役員に関する事項」「資格」取締役、「氏名」〇〇〇〇、「原因年月日」令和〇年〇月〇日辞任登録免許税:資本金1億円以下の場合は金10,000円、1億円超の場合は金30,000円添付書類:辞任届(後任選任があれば株主総会議事録、株主リスト等も記載)辞任届の注意点辞任届には辞任する取締役の氏名・押印が必要です。押印する印鑑の種類によって提出書類が変わります。認印または個人の実印:辞任届のみで可(ただし会社が代表取締役である場合や特定のケースは除く)代表取締役が辞任する場合:会社の実印(代表印)か、個人の実印+印鑑証明書が必要創業期のスタートアップでは代表取締役以外の取締役(共同創業者など)が辞任するケースが多いため、認印で対応できるケースもあります。取締役辞任登記のテンプレート・ひな形辞任届のテンプレート辞任届のひな形は以下からダウンロードできます。ダウンロードURL:取締役 辞任届 ひな形|辞任届(一身上の都合による取締役の辞任)登記申請書のテンプレート辞任等による役員変更登記の申請書ひな形はこちらです。ダウンロードURL:申請書(辞任等による新たな役員(取締役)就任に係る役員変更登記)また、法務局の公式Webサイトでは、辞任のみのケースや後任者が就任するケースなど、複数パターンの登記申請書テンプレートと記載例が無料でダウンロードできます。自社の状況に近いパターンを参考にしてください。GVA 法人登記で変更登記の必要書類を自分で作成本記事で紹介したテンプレートを使って自分で書類を作成・申請することは十分に可能です。辞任のみのシンプルなケースであれば、必要書類が少なく、慣れていない方でも対応しやすいでしょう。ただし、後任選任が伴うケースや、取締役会の設置有無によって書類の種類・書き方が変わるため、自社の状況に合わせた正確な内容で揃えるには相応の手間がかかります。「期限が迫っている」「書類に不備を出したくない」という場合は、オンラインで書類作成できるサービスの活用も有効な選択肢です。GVA 法人登記なら、変更したい情報を入力するだけで、登記申請書や議事録、その他の添付書類などの必要書類を自分で準備できます。郵送申請や登記簿謄本の取得、収入印紙の購入をサポートするオプションも充実しており、法務局に足を運ぶことなく手続きを完結させることができます。手間・時間・費用のバランスを取りながら確実に登記申請を済ませたい方におすすめのサービスです。