比較的小規模な事業を行なう法人や外資系企業の日本法人など、コンパクトな法人種類として合同会社が選ばれることが増えています。ただし、オフィス移転などで本店所在地の変更が発生すれば株式会社などと同じように登記申請は必要です。本記事では合同会社の本店移転手続と登記申請書・必要書類について解説します。GVA 法人登記のクーポン付メルマガを購読登記申請のタイミングは忘れた頃にやってくるものです。GVA 法人登記のメルマガでは、毎号割引クーポンを配布しております。登録フォームからぜひご購読ください。合同会社の本店移転とは?そもそも合同会社の本店移転とはどのようなものなのかについて解説します。本店移転とは?本店移転とは、会社・法人の本店住所(所在地)を移転することをいいます。背景としてはオフィスの移転や転居(自宅住所を本店登記している場合)などがこれに該当します。法人の定款には、絶対的記載事項として本店所在地が記載されます。その定款の記載内容によっては、本店移転を行なう際には会社内での本店移転の意思決定だけで無く、定款変更の手続が必要になります。また、会社の本店所在地は登記事項証明書(登記簿謄本)にも記載されています。そのため、本店移転をした際には登記簿謄本に記載の住所の変更もする必要があります。この登記手続は変更を生じた日(本店移転をした日)から2週間以内に行う必要があります。本店移転後は登記申請以外に税務署や市区町村等への届出も必要になるので忘れないようにしましょう。本店移転登記を自分で申請することは可能だが専門家のアドバイスも有効前述の通り本店を移転した際には登記が必要となりますが、登記申請をする際には、弁護士や司法書士といった法律の専門家に依頼する方法だけでなく、自分で申請する方法もあります。自分で申請すると聞くと、ハードルが高く感じるかもしれませんが、本店移転登記は法人の変更登記手続の中では比較的シンプルなため、自分で書類を作成して申請することも可能です。特に合同会社の場合、株式会社と異なり株主総会の開催が不要なため手続の負担も少なく、それほどハードルは高くありません。ただし、合同会社という会社形態になじみがないと、制度の理解や各種名称の違いに手間取ってしまう可能性もあります。そのような場合は法律の専門家に相談するのも有効です。管轄内・管轄外で手続や費用が異なる本店移転は大別して管轄内と管轄外の移転の2種類があります。現在の本店所在地と移転先を管轄する法務局が同じであれば管轄内移転となり、異なるのであれば管轄外移転となります。具体例でいうと現在の本店所在地も移転先も新宿区内であれば管轄内移転、新宿区から渋谷区の移転であれば管轄外移転となります。後述するように管轄内か外かで作成する書類内容や登録免許税が異なるため、移転先が法局の管轄内であるか管轄外であるかには注意が必要です。管轄外の方が登録免許税が高くなるため、移転先の場所にこだわりがなければ、管轄内のほうが費用が安く済むという点は押さえておきましょう。なお、管轄に関するルールなどは株式会社であるか合同会社であるかといった会社の種類によって違いはありません。合同会社の本店移転登記の流れ次に、合同会社の本店移転登記の流れについて解説します。①社内手続まず、本店所在地を変更すること(移転先の住所や移転日など)について業務執行社員の過半数で決定する必要があります。そのうえで、定款の記載内容や本店の移転先によって、定款変更手続の要否が変わります。定款変更が必要な場合定款の本店所在地の記載が●●区や●●市といった最小行政区画の場合には、他の区や市に移転する際には定款変更の手続が必要となります。また、定款で最小行政区画だけでなく、地番やビル名まで記載している場合には、同一の行政区画内での移転であっても定款変更の手続が必要となります。合同会社の定款変更は、定款に別段の定めがない限りは総社員の同意が必要となるので、この場合には総社員の同意書が必要になります。定款変更が不要な場合定款の本店所在地の記載が●●区や●●市といった最小行政区画の場合であって、その行政区画内の移転であれば、定款変更の手続は必要ありません。②登記申請書類を作成して法務局に提出する次は登記手続です。登記申請書を作成し、登記申請書や議事録など必要書類を添付して法務局の窓口に持参するか郵送で申請することになります。このとき、現在の法務局の管轄外への移転の場合、新旧両方の管轄法務局に申請が必要になる点には注意が必要です。ただし、実際の手続としては旧管轄法務局のみに申請するだけで足ります。登記手続には登録免許税と呼ばれる費用が発生します。これはどの方法で登記申請しても必ずかかる税金です。納付の方法は収入印紙の貼り付けによって納付します。本店移転の場合の登録免許税額は管轄内移転の場合には3万円、管轄外への移転の場合6万円となります。代表社員の住所を本店登記している場合設立間もない、規模の小さい合同会社の中には、本店住所を代表社員などの住所としているケースが少なくありません。こうした会社で本店移転を行なう場合には、変更に伴い、本店住所と代表者住所の両方を変更する必要があります。そのため、代表者住所の変更登記も必要となるため、登録免許税が追加で必要となります。代表者住所の変更の登録免許税額は1万円(資本金1億円超の場合は3万円)です。なお、令和6年10月に代表取締役等の住所表示措置が開始しましたが、現在は株式会社のみが対象となります。勘違いしないように注意しましょう。合同会社の本店移転登記の登記申請書・必要書類では合同会社の本店移転登記の登記手続に必要な書類にはどのようなものがあるでしょうか。ここでは合同会社の本店移転登記の登記申請書・必要書類について解説します。本店移転登記の必要書類本店移転登記の必要書類は以下の通りです。総社員の同意書定款変更が必要な場合に必要になる書類です。定款をどのように変更するのか記載し、こうした変更に同意することを全ての社員が記名押印する必要があります。業務執行社員の決定書本店所在地を変更する事について業務執行社員の決定があったことを記載する必要があります。なお、業務執行社員の過半数の賛成があれば足ります。委任状登記手続を司法書士等に委任する場合に必要になります。1 令和○年○月○日に当会社の本店を移転したので、その登記の申請に関する一切の件 1 原本還付の請求及び受領の件のように何の権限を委任したのか明確になるように作成しましょう。印鑑届書印鑑届書とは、会社の実印を届け出るための書類です。印鑑届書のフォーマットは後述するように法務局のHP上にあるためそれを用いるのが良いでしょう。この印鑑届書は管轄外移転の場合に必要となります。印鑑証明書印鑑証明書は印鑑届出書に押印した印鑑が、その法人の実印であることを公的に証明する文書です。法人の印鑑証明書は法務局で取得が可能です。本店移転の登記申請書のひな形(テンプレート)本店移転の登記申請書は法務局がWebサイトでテンプレートを公開しているため参考にするのも良い方法です。管轄内移転の場合法務局が公開しているテンプレートはこちらになります。合同会社本店移転登記申請書(管轄内移転)wordの書式|記載例PDF管轄内移転の場合の登記申請書の記載例は上記になります。記載例に従い、①法人番号、②商号、③本店所在地、④登記の事由、⑤登記すべき事項等を記載しておきましょう。管轄外移転の場合管轄外移転の場合の法務局のHPのフォーマットはこちらになります。合同会社本店移転登記申請書(管轄外移転)wordの書式|記載例PDF印鑑届書 印鑑届書書式PDF|印鑑届書の記載例PDF管轄外移転の場合も上記のフォーマットに従って記載事項を記載していきましょう。なお、前述の通り管轄外移転の場合には移転前の法務局へ新しい住所を管轄する法務局宛の登記申請書と移転前の法務局宛の登記申請書の2通を提出する必要があります。合同会社の本店移転に伴う届出本店住所は会社にとって重要な情報のため、登記申請後もさまざまな手続が必要になります。以下にて例を紹介します。税務署(国税)税務署へは「異動事項に関する届出」及び「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」が必要です。特に管轄外移転の場合には、移転前の税務署と移転後の税務署の両方に提出が必要になるため注意しましょう。都道府県税事務所(都道府県税)移転後速やかに、「事業開始等申告書」の提出が必要です。都道府県をまたぐ場合には移転前後の事務所に提出する必要があるため、注意しましょう。市区町村(市区町村税)市区町村へは「法人の設立(設置)変更等申告書」の提出が必要です。提出期限については特に定めがありませんが、移転後速やかに提出するようにしましょう。年金事務所「適用事業所名称/所在地変更(訂正)届」の提出が必要です。日本年金機構のHP上で管轄内移転の場合と管轄外移転の場合とで分けて対応方法を紹介しているため、まずはそちらを確認して対応するようにしましょう。公共事業安定所(ハローワーク)「雇用保険事業主事業所各種変更届」の提出が必要になります。金融機関金融機関には登録口座の住所変更の手続が必要になります。忘れがちなので移転後速やかに行なうようにしましょう。取引先書類や各種文書の送付先が変わるため、本店移転したことを知らせる必要があります。可能であれば移転前にいつ住所が変わるのかを知らせる連絡をするようにしましょう。手間や時間を考えると法律の専門家への相談も有効合同会社の本店移転における登記手続は自分で申請することも可能ですが、移転後の住所が管轄内か管轄外かによって必要となる手続や費用が変わってきます。本店移転後にはさまざまな届出も必要になります。また、株式会社と比較して決議方法や用語などの違いがあります。これら手続に不慣れな方は手間や時間を考えると法律の専門家への相談も有効です。自分がどのくらいリソースをを負担できるかによって検討しましょう。